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第143回 公開セミナー
日時 | 2025年10月4日(土) 13:30 ~ 15:30 (予定) |
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場所 | 公益財団法人倶進会事務所(営団地下鉄丸の内線・四谷三丁目駅より徒歩3分) |
題目 | ゲノム編集技術ガバナンスをめぐる市民の懸念と行政の応答 |
発題者 | 山口富子 氏 (国際基督教大学教授・倶進会評議員) |
講師略歴 | 国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科教授。 専門は、科学技術社会論、社会学で、バイオテクノロジーと社会、食の安全安心、期待の社会学、専門家と市民の関係性などを中心に研究を進めている。遺伝子組換え技術やゲノム編集技術を事例に、科学技術と社会の関係性を検討し、その相互作用を明らかにしてきた。研究関連活動としては、内閣府SIP「スマートバイオ産業・農業基盤技術」プログラムや、科学技術振興機構(JST)の「食の未来を拓く革新的先端技術の創出」課題に参画。著書には『予測をつくる社会「科学の言葉」の使われ方』(編著, 2019年)、『萌芽する科学技術:先端科学技術への社会学的アプローチ』(共著, 2009年)などがある。 |
内容 | 本話題提供は、ゲノム編集食品をめぐる市民の懸念と行政の応答を分析し、科学技術と社会の関係を考察するものである。ゲノム編集技術は、食料安全保障や持続可能性に資する革新技術として期待される一方、長期的な安全性や表示制度の不備など多くの懸念を伴ってきた。日本では規制の迅速な整備により市場導入が進んだが、その過程で市民団体を中心に批判や不安が表明されている。 このように制度整備と社会的懸念が交錯する状況のなかで、本研究は行政が制度の正当性を支えるために展開する「ガバナンス・ナラティブ」に注目し、市民との緊張関係がどのように処理されているかを検討した。分析対象は、2018年以降に公開された関連文書、とりわけパブリックコメントに寄せられた市民の意見と行政の応答である。 結果、市民の意見の大半は否定的であり、特にリスクや不確実性、消費者の選択権、透明性に強い不満が確認された。それに対し行政の応答は、法令の適正さや科学的合理性を繰り返し強調する一方で、倫理的・規範的な論点は「理解不足」や「技術的課題」として処理され、制度の外縁に押しやる傾向がみられた。 パブリックコメントは形式的には制度に組み込まれているものの、市民の懸念が十分に応答されておらず、社会的信頼へとつながる道筋が十分に開かれていない。生活世界に根ざした懸念や倫理的視点に制度内部から応答できる言説空間の構築こそが、科学技術と社会の関係をより包摂的にする出発点となる。 |
お申し込み | 参加費無料:同好の方をお誘い下されば幸いです。 |
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